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慢性心不全看護
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慢性心不全看護

心不全増悪による入退院の繰り返しは、患者・家族のQOLを低下させるのみならず医療経済の圧迫に繋がることから、社会問題として捉えられてきています。そこで、患者が心不全を増悪させることなく質の高い療養生活を過ごせるような支援や心不全への予防的取り組みをしていきます。

慢性心不全の定義

慢性の心筋障害により、心臓のポンプ機能が低下し、末梢主要臓器の酸素需要に見合うだけの血液量を絶対的にまた相対的に拍出できない状態であり、肺または体静脈系にうっ血をきたし生活機能に障害を生じた病態

慢性心不全ガイドライン(2010年改訂)

病院別 資格取得者数

上尾中央総合病院:2名 認定看護師 認定看護師

コンサルテーション例

慢性心不全の病態

  • 急性心不全(急性増悪含む)と慢性心不全について
  • 心不全のステージ分類について
  • 収縮不全と拡張不全について
  • 神経体液性因子による代償機転とは・・?
  • 心不全の増悪因子とは・・?
  • 合併症を有する慢性心不全患者(心房細動、慢性腎臓病、糖尿病など)

慢性心不全の治療

  • 薬物療法(ACE阻害薬とARB、β遮断薬、利尿薬など)について
  • 食事療法(塩分管理・水分管理)について
  • 運動療法(心臓リハビリテーション)について
  • 非薬物療法(心臓再同期療法・植込み型除細動器)について
  • 危険因子の是正(禁煙、肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧の管理)について

慢性心不全患者のケア

  • 慢性心不全患者の症状観察とケア方法
  • 慢性心不全の認知・精神機能(不安・せん妄・抑うつ)とケア方法
  • 心不全増悪因子の評価とモニタリング方法
  • 慢性心不全患者のセルフケア支援
  • 重症心不全患者の緩和ケア

その他

  • 慢性心不全患者の特徴(患者背景や予後など)について
  • 健康行動理論(自己効力理論・行動変容ステージモデルなど)について

このほかニーズに合わせた研修会なども可能です。
現場でお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。

認定看護師 活動報告

2024年10月紹介

認定看護師

今回は心不全地域連携パスについて紹介していきます。

クリティカルパスとは、良質な医療を効率的、かつ安全、適正に提供するための手段として開発された診療計画表のことで、疾患によってはパスを使用して入院加療がされており皆さんにも馴染みがあるかと思われます。地域医療連携パスとは、機能分化した各施設役割分担に基づき、急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅に帰れるような診療計画を作成し、治療を受ける全ての医療機関で共有して用いることにより、施設間の壁を越えて一貫した治療の流れを確立するためのものです。内容としては、施設ごとの治療経過に従って、診療ガイドライン等に基づき、診療内容や達成目標等を診療計画として明示することにより、医療連携体制に基づく地域完結型医療を具体的にすることを目的としています。

地域連携パスには「一方向型(リハビリ型)」、「双方向型(循環型)」、「在宅支援型」の3種類がありあます。心不全地域連携パスは双方向型(循環型)に当てはまり、かかりつけ医と専門病院を定期的に循環して診療していくものになります。心不全患者の増加や再入院が多いなどの背景から地域で心不全患者を支える仕組みとして近年様々な施設で取り組まれてきています。当院は、2023年1月にワーキンググループが発足し同年10月より運用を開始しています。まだまだ課題はありますが、切れ目のない医療を目指して今後も取り組んでいこうと思います。

上尾中央総合病院  菅原 美奈子

2023年6月紹介

認定看護師

 昨年、認定審査を合格して目標の一つだった心不全看護認定看護師になることができました。私が認定看護師を目指したのは看護師3年目の時です。同じ病棟に慢性心不全認定看護師の先輩がいて、卓越した患者さんへの看護提供能力と病態アセスメント、看護師に対して根拠のあるリーダーシップ能力を発揮している姿に尊敬し、憧れを抱いて認定看護師を目指すことにしました。岡山県の倉敷市で特定行為を含む認定看護師教育課程に約10か月研修として参加しましたが、それは同じ志を持つ同期と毎日切磋琢磨しながら心不全看護について学び、非常に充実した時間を過ごすことができました。そして、今はその学び、経験した内容を研修に送り出してくれた病院に還元したいという気持ちです。
 心不全は長年の生活習慣の結果、誰でも発症する可能性のある病気です。それにも関わらず、5年生存率が50%と一部の悪性新生物よりも致死率が高く、増悪を繰り返しながら進行し、突然死もあり得る予後予測が困難な重篤な疾患です。このような病気の特徴があるにも関わらず、世間一般にあまり認知されていません。入院するときには呼吸困難感などの恐怖体験をしますが、退院するときには身体機能が回復し、症状も改善し、治ったと錯覚してしまうことが要因の一つです。このような病いを抱えながらも、その人らしい生活、人生を送り、そして最期を迎えられるためには看護の力が必要不可欠です。そして、私はそれらに直面している患者、家族の支援を役割としています。超急性期から慢性期、そして在宅期、終末期と幅広い病期を過ごす患者さんや家族は様々な人生の選択、Bad newsを受け入れ、日常生活を送り続ける必要があり、より個別性を考慮した、高度な看護技術が求められます。支援を必要とする人の思いや価値観を共有し、その人の当たり前、その人なりの日常を送れるよう、看護として、チーム医療の一員としてできることは何かを考え、看護師として自分にできることを行い、看護実践していこうと考えています。
 同時に、自分一人ではできることも微力です。役割の一つである同じ病棟、病院のスタッフへの指導や相談の受け入れも行いながら、自分にできることを精一杯取り組んでいこうと思います。過去に尊敬し、学ばせて頂いた先輩看護師、そしてこれまでに関わった患者さん、家族から学んだ多くのことを自分なりの表現していくことがこれからの目標として、掲げたいと思っています。よろしくお願い致します。

上尾中央総合病院  小玉 勇士

2017年8月紹介

慢性心不全看護

今回は心臓リハビリテーションについて紹介していきます。
リハビリテーションというと運動療法をイメージされる方が多いと思います。また、患者さん自身も治療が終わって退院されると「特に症状もないし普通に動けるし大丈夫だよ」という方も少なくありません。確かに、昔の心臓リハビリテーションは運動療法が主体で取り組まれていました。しかし、ここ数年で心臓リハビリテーションは「運動療法と生活指導を軸にした心疾患管理(自己管理含む)」が重要といわれるようになりました。何故なら、心臓リハビリテーションの対象となる疾患は、生活習慣が深く関わっていることが多くその是正がなされなければ再発したり、増悪したりしてしまうということが分かってきたからです。患者さんを中心に医師や看護師、薬剤師や管理栄養士、検査技師などの他職種も理学療法士と共に連携を図りつつチームとして介入することで疾患管理(自己管理含む)の確立を目指す施設が増えてきています。

当院でも心臓リハビリテーション自体はかなり前から取り組まれていましたが、他職種でチームとして介入するようになったのは今年度からとなります。私が関わっているのは外来心臓リハビリテーションに通院されている患者さんとなりますが、理学療法士の方と共に安全にリハビリが実施できるようにモニター監視したり症状確認したりしています。また、初回時に看護面談を実施し生活習慣の是正が必要かどうかの確認をしたうえで是正が必要な事に関してリハビリ時に声掛けしたりするようにしています。 まだまだ他職種介入としての取り組みは始まったばかりなので課題もありますが、「患者さんが安全にリハビリを受けられること。また、患者さん自身が病気のことを理解したうえで自己管理していくことができるようになること」を目標に運用強化を図っていきたいと思います。

参考までに心臓リハビリテーションの対象となる疾患を下記に載せておきます。
疾患名:急性心筋梗塞・狭心症、開心術後、大血管疾患(急性発症した大動脈解離、解離性大動脈瘤、大血管術後)、慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患

*健康保険上、心臓リハビリテーションによって保険償還が得られる期間は心臓リハビリテーション起算日(発症、手術、もしくは急性増悪から7日目または治療開始日のいずれか早いもの)から150日間となります。

上尾中央総合病院  菅原 美奈子

2016年7月紹介

今回のテーマは、セルフマネジメントの確立に向けた支援についてです。
臨床において、心不全の再入院患者さんに遭遇することはよくあることです。そしてそのような場面において「また、入院してきちゃった?」「食事の管理ができていないからかな?」「薬飲んでいなかった?」というような思いを抱くことはありま せんか?私も研修に行くまでは「何でまた入院してきちゃったの?」とよく思っていました。でも、それは患者さんが悪いわけではありません。食事管理や内服管理ができないのには理由があります。そして、その理由は患者さんひとりひとりで違うのです。
だからこそ、ひとりひとりときちんと向き合いその人の生活背景や想いなどを探り『できない』理由を見極めていく必要があります。自分だけでできるものなのか他者の介入が必要なのか。他者の介入は身内だけとは限りません。訪問診療や訪問看護・介護などさまざまな方法を模索し、患者さんのセルフマネジメント確立に向け手助けしていく必要があるのです。
実際に介入するときには、まず『できていた』ことを確認し賞賛するようにしています。そして、『できていない』ことには共に振り返るようにしています。
軽症心不全では、1日塩分7g以下程度の減塩食(重症心不全では1日3g以下の厳格な塩分制限)がガイドラインで推奨されています。「ラーメンの汁には塩分が多く含まれているので全部飲まないようにしましょう」と説明しますが、実際どの位なのかというのはイメージしにくいと思います。そのため、認識を深める手段として下の写真の様に栄養成分表を見てもらったりします。ちなみに、カップ焼きそばだと汁を全部飲まないでという説明は当てはまりませんのでこれを食べるとそれだけで1日分となってしまうことを伝えたりしてます。目で見て分かるようにしたり客観的に評価できるように数値を用いたりすることで患者さん自身がイメージしやすいものを上手く活用していくことが重要だと思っています。

慢性心不全看護

上尾中央総合病院  菅原 美奈子

2015年06月紹介

慢性心不全看護

心不全とは、あらゆる心臓の病気が最終的に行きつく病態、症候群のことをさしているので病名ではありません。つまり、心不全を起こす原因となる疾患があるということです。原因疾患にはいろいろありますが、代表的なものは心筋梗塞・弁膜症・不整脈・心筋症・高血圧・先天性心疾患などがあります。

日本で実施された心不全患者数の予測に関する疫学研究では、2030 年に心不全患者は 130 万人に達すると推計されています。また、心不全患者の1年死亡率(全死亡)はJCARE-CARD、CHART-1ともに7.3%、JCARE-CARDにおける心不全増悪による再入院率は、退院後6か月以内で27%、1年後は35%であり高い再入院率となっています。そのため、死亡率の改善とともに心不全増悪による再入院を防ぐことが心不全の重要な治療目標となります。JCARE-CARDで調査した心不全増悪による再入院の誘因では、感染症・不整脈・心筋虚血・高血圧などの医学的要因が重要であることに加え、塩分・水分制限の不徹底、過労、治療薬服用の不徹底、精神的または身体的ストレスなどの予防可能な誘因で入院する患者も多いため、治療に対するアドヒアランスを向上させるための患者教育の強化や包括的な支援も重要だとされています。このようなことから、最近では他職種によるチーム医療が推進されチームで心不全患者を支援していく取り組みが様々な施設で行われてきています。

上の写真は心不全手帳というもので、内容は心不全とはどのような病気なのか、心不全の症状とどのような時に受診が必要なのか、処方される内服薬の特徴などが書かれています。それと合わせて日々の血圧・体重・自覚症状などが記録できるようになっているので、セルフマネジメントをしていくためのツールとして活用しています。この記録をもとに日々の振り返りを共に行いセルフマネジメント確立・維持・向上につなげるようにしています。

上尾中央総合病院  菅原 美奈子

2014年7月紹介

慢性心不全看護

慢性心不全では、心不全増悪を繰り返すことで心機能は悪くなり予後に影響がでるといわれています。そのため、再入院をすることなく日常生活をおくれるよう患者自身、もしくはご家族のセルフマネジメント能力の向上が図れるように働きかけていきます。

私は現在循環器外来で勤務していますので、心不全予備軍の方から入退院を繰り返している方など幅広くお話しを聞き介入しています。生活習慣を変えて維持していくということは、とても大変なこことで容易にできる方は中々いません。患者自身もそうですが、介入する私たちも根気よく共に疾病とうまくつき合う方法を見いだすことができるように支えていくことが大切だと思っています。
また、生活習慣病教室では糖尿病をメインとした内容が多かったのですが、昨年より心臓病についてもお話させていただくようにし予防的介入にも取り組むようにしています。
今後は、心臓リハビリテーションにも積極的に介入し、心不全患者さんの生活の質(QOL)改善にも目を向けていきたいと思います。

上尾中央総合病院  菅原 美奈子